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コラム
【第49話】企業理念の「機能」を理解していない社員
2020.07.20
先日、ある企業でご相談を受けた。
会社の方針や企業理念と違う言動の
管理者がいるという。
彼は、常日頃から、
部下に「私は会社を信じない」と
公言しているという。
過去職場での辛い経験、おそらく
「会社から裏切られた」と感じた
経験からなのだろう。
部下には、
「会社から突っ込まれたら、
理念に則って、こうやっている、
と言い訳は用意しておけ」
と言っているという。
「会社がいつ責任追及をしてきてもいいように、
自分の身は自分で守れ」、
というメッセージ。
これは、彼なりの、
部下への優しさなのかもしれないが、
しかし、これでは、
自発性と創造性を発揮する条件である
心理的「安心・安全な職場」にはならない。
その原因は、
『企業理念の「機能」を正しく理解していないから』
です、とお伝えしました。
- 社員は、会社の「姿勢」を真似る
この事例は、
会社が「保身」に走れば、
社員もその真似をする。
つまり、
会社が社員を信じる努力をしなければ、
社員も会社を信じることなく
「保身」に走るようになったというケース。
・・・この状態のままだと、
社員と経営側の溝は埋まらない。
いつも会社の方針に疑心暗鬼になり、
身を守ることを第一に行動する社員ばかりでは、
方針の実行は難しいし、
社員の自発的な創造性は発揮されないから、
本当の組織力を発揮することはできない。
生産性も上がりにくい組織風土になる。
しかし、
ご相談いただいた経営者は、
今後は企業理念が示す理想像に向けて
成長していく流れを作っていきたいという。
理念、方針を浸透させることは、
経営者の大切な役割であり、
その経営者の分身となって、
正しいマネジメントを行うのが管理職の役割。
しかし、経営者自身が
理念、方針には日頃から触れず、
会社の利益・株主の利益の話ばかりしていると、
社員も、自分の利益を重視する考え方になる。
「社長は、会社の理念よりも、利益の話ばかりだ。」
「与えられたノルマを最低限クリアすれば、
文句は言われないだろう」、と言う姿勢のもと、
業績、生産性、効率などの
数字を出しさえすれば
社員は役割を果たしている
と言う考え方の職場になっていく。
その管理者は、こうも言う。
「信じない、というのはお互い様ではないか?」
「何か問題が起きれば、それは管理者の責任だと、
社員のせいにし、会社は責任を取らないじゃないか」
と。
責任を取るのはいつも現場の社員だと、
被害者意識を強く持っていた。
そのように、
会社は社員を扱ってきたのだろう。
- 企業理念の「機能」とは
この会社の本質的なずれは、
なぜ、理念が大切なのか、
という根本的な「考え方」を
経営者は社員に伝えていなかったこと。
企業理念とは、会社が目指す在り方。
「会社は何のためにあるのか?
どんな価値を社会に提供するために存在するのか?」
という会社の根っこの部分を
全社員やあらゆる関係者に理解浸透させていくためにある。
根っこを知るから、
各自が現場で判断する行動の中に、
肝心なことが欠落しないのだ。
根っこを知り、仕事を重ねて言った結果、
会社は理念の実現に向けて進んでいく。
根っこを知らずに、日々の仕事を重ねるだけでは、
会社が大切にしている提供価値を見落としてしまう。
すると、
経済合理性だけで判断する傾向が優先され、
大切な社員を守るより、
会社の利益を守るような判断に
繋がっていったのではないかと思う。
このような、企業理念の「機能」を
経営者や幹部は社員に話し伝えているだろうか?
企業理念の言葉の意味を紐解いて、
「だから、我が社ではこういうことを大切にしているのだ」
という話を社員はどのくらい話せるか?
それは、企業理念の浸透度を
測るバロメーターとなる。
今、経営の現場では、
様々な人と組織の問題が起きている。
これからは、
業績や利益のことしか話題がないような会社では、
社員の心が会社から離れていく。
人の心が離れると殺伐とした職場になり、
前向きな言動は自発的にはでてこない。
結果として、生産性は上がらず、
求められる利益すらもあげられなくなる可能性がある。
企業理念は、作って終わりではなく、
浸透させる「機能」させることが重要だと考える。
今、あなたの職場では、
企業理念の「機能」を理解できるような場を、
社内でどのくらい設けていますか?
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株式会社トゥルーチームコンサルティング
代表取締役/一般社団法人 自走式組織協会
代表理事
吉野 創(よしの はじめ)
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